私が初めて漢方に出会って、効果を実感した処方が「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」でした。
若いころから顔色が悪く、生理痛がひどく、生理前になると何かしら不調がある、ライフスタイルが乱れた、どこにでもいる若い女性でした。
独身のころは、男の役割、女の役割、をあまり認識せず、仕事もプライベートもそれなりの人生…。
32歳のころ、第一子を出産し、翌年、第二子を出産。そして、そのころから体調を崩し始めました。
ちょうど同時期に、大学病院から「女性外来の立ち上げを」との仕事をいただきました。
46歳になった今、そのころの自分を振り返ると、体だけではなく、いろいろな人間関係もストレス原因だったと、冷静に考えられますが、そのときの不調は、検査をしても異常がなかったので、西洋医学で育った私は、納得ができませんでした。
「女性医療ネットワーク」「性差医療情報ネットワーク」でいろいろな先生方に出会って、漢方薬や女性ホルモンの大切さ、ライフステージに即した健康認識の大切さ、を教えていただきました。
私の体質(証)は、長年の食生活のせいか血流が滞っている「瘀血(おけつ)」。
そこに、産後の抑うつ、人間関係のストレスが加わり、イライラする日々でした。
「桃核承気湯」の使用目的である「奔豚気(ほんとんき):おなかから突き上げるような…症状」があり、便秘、イライラ、生理痛という西洋医学では理解できない症状が1包の内服ですーっと改善していきました。
「桃核承気湯」は、「芒硝(ぼうしょう)」「大黄(だいおう)」の下剤が含まれているので、便秘のない人は使用を注意してください。
あとから勉強していくと、「桃核承気湯」の中には、「桂皮(けいひ)」が含まれていて、この「桂皮」成分は、血液やリンパなどの微小循環の維持に、とても大切な血管内皮機能をよくする働き(tie2:タイツー 活性)があることを学び、分子生物学的にも効果があることがわかりました。
微小循環を治し、血流やリンパの流れをよくすることは、さまざまな不定愁訴を治すことにつながり、これからの勉強がさらに楽しみになります。
漢方薬は、微小循環の改善にとても有用なツールだと実感しています。
漢方薬とひと言でいっても、日本漢方・中医・中国漢方とありますが、私の経験は、日本の漢方医療のエキス剤でした。
- 赤澤 純代SUMIYO AKAZAWA
- 金沢医科大学総合内科学准教授。集学的医療部女性総合診療センター副センター長。女性総合外来。 金沢医科大学卒業後、東京大学第三内科、東京大学先端技術研究所ゲノムサイエンス、金沢医科大学循環器内科を経て現職。女性特有の体や心の問題に対し、ライフステージに合わせてやってくる変化とうまくつきあいながら、いつまでも生き生きと輝いて歳を重ねていくための方法を研究、実践、提案している。
- 金沢医科大学病院 女性総合外来
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